カフェインレスコーヒーはどうやって作られ、その意義と安全性はどのようなものか、また、その成分が体にどのような影響を与えるのかについて知りたい方も多いでしょう。
本記事では、カフェインレスコーヒーのカフェイン除去方法から、その健康への効果、使用される成分までを詳細に解説します。
カフェインを控えたいというニーズは高まる一方で、その製造プロセスの安全性や飲用時の体への影響について正確な情報を提供することで、読者の皆さんがより良い選択ができるように支援します。
- カフェインレスコーヒーの製造プロセスとその安全性について
- カフェインレスコーヒーに含まれる成分とその特性
- カフェイン除去方法の種類と各方法の特徴
- カフェインレスコーヒーが体に与える影響とその健康効果
カフェインレスコーヒーはどうやって健康を守る?
カフェインレスコーヒーの意義
カフェインレスコーヒーが重要視される理由は、カフェインによる副作用を避けつつ、コーヒーを楽しみたい人々にとって理想的な選択肢を提供することです。
カフェインは一部の人にとって不眠や不安、胃の不快感を引き起こすことがあるため、これらの症状に悩む人々が安心してコーヒーを楽しむための方法として、カフェインレスコーヒーが用意されています。
さらに、妊婦や特定の健康問題を抱える人々にとって、カフェインの摂取制限は医師からしばしば推奨されるため、カフェインレスのオプションが非常に有益です。
デカフェとは?その安全性と健康への効果
デカフェは、元々カフェインを含んでいるコーヒーからカフェインを大部分取り除いた飲料です。
このプロセスは安全性が高く、多くの方法で行われますが、最も一般的なのは水または二酸化炭素を使用した方法です。
これらの方法は、コーヒー豆の自然な味を損なうことなくカフェインだけを効果的に除去することができます。
デカフェの健康への効果は一般的なコーヒーと同様に、抗酸化物質を含んでいるため、心臓病や糖尿病などのリスクを低減する助けとなる可能性があります。
ただし、カフェインが完全に除去されているわけではないため、極端に敏感な人は少量のカフェインにも反応することがある点を考慮する必要があります。
カフェインレスコーヒーの成分
カフェインレスコーヒーは、名前の通り、カフェインを大幅に減少させたコーヒーです。
ただし、完全にカフェインがゼロというわけではありません。日本では、カフェインを90%以上除去したものを「カフェインレス」と表示することが許可されています。
そのため、残るカフェインの量は非常に少ないものの、完全に無いわけではない点に注意が必要です。
主な成分としては、カフェイン以外にもアラビカ種やロブスタ種といったコーヒー豆の種類によって異なりますが、アミノ酸、脂肪酸、糖類などが含まれています。
デカフェが体に及ぼす影響
デカフェ、つまりカフェインレスコーヒーが体に及ぼす影響は、多くの場合、肯定的です。
カフェインに敏感な人や、妊娠中の女性、特定の健康状態の人々にとっては、カフェインの摂取を控えることが推奨されるため、デカフェは良い選択肢となります。
ただし、カフェインを除去する過程でコーヒーのフレーバーに影響を与える可能性があるため、味の面で通常のコーヒーと異なることも理解しておく必要があります。
また、カフェインが全く含まれていないわけではないので、敏感な人は少量でも反応することがあることを念頭に置くと良いでしょう。
カフェインレスコーヒーはどうやって作られているのか
カフェインの抽出方法は下記の通り。
有機溶媒抽出法
コーヒー生豆を有機溶媒に浸し、カフェインを除去する方法。
あとに紹介する水抽出法を間接法と呼ぶのに対して有機溶媒に直接接することから直接法と呼ばれます。
有機溶媒は塩化メチレンか酢酸エチルが使われています。
海外では一般的ですが日本では使用を認められていません。
- 慣用名は塩化メチレンですが正式名はジクロロメタン
- 有機溶媒の一種
- 皮膚や目に接触すると炎症を起こしたり、毒性があるとされている
- 金属機械の油脂を洗浄する用途で使用される
- 日本では食品に使用することが出来ない
- 甘い芳香をもつ液体
- 沸点は39.6℃
- 有機化合物で酢酸とエタノールで生成される
- 自然界に存在しており、パイナップルなどの果実中に存在する
- 香気が強く、香料として果実や果実エッセンスとして使用される
- 有機物を溶かす能力が強いことから塗料の溶剤として使用される
- 食品添加物として指定されているが着香のみの使用に限られている
- 沸点は77℃
有機溶媒抽出法のカフェイン除去工程
有機溶媒抽出法の特徴・メリット・デメリット
- 日本では使用不可
- 有機溶媒が直接豆に接する為安全性については疑問
- カフェイン以外の成分も抽出される為味や香りが落ちる
- 塩化メチレン・酢酸エチルは日本では使用できない
- 酢酸エチルについては自然界に存在する為安全とされ海外では一般的な除去方法
- 安価にカフェイン除去できる
EA Sugarcane Process(イーエー シュガーケーン プロセス)
有機溶媒抽出法のくくりに入れるべきか迷うところではありますが、酢酸エチルを直接法で使用することから有機溶媒抽出法ではないかと思います。
コロンビアで用いられる抽出方法。
さとうきびを発酵させ、そこにアルコールを添加することで酢酸エチルを作り、それを用いてカフェインを除去する方法です。
高温と高圧をかけないこと、さとうきび由来の酢酸エチルを使用することで甘くて鮮やかなデカフェになります。
実際に飲んでみましたが、たしかに甘い香りを感じました。
ただ化学的な酢酸エチルとさとうきび由来の酢酸エチルとの違いがわかないので積極的には飲みにくいですね。
ポストコーヒー デカフェ コロンビア ウィラ⇒EA Sugarcane Processのデカフェはポストコーヒーさんで購入できます。
水抽出法(塩化メチレン法)
有機溶媒製法と同様に有機溶媒を使ってカフェインを除去する方法。
有機溶媒抽出法が直接法と呼ばれるのに対して間接的に使われることから間接法と呼ばれています。
このあとご紹介する、スイスウォーター製法・マウンテンウォーター製法と混同されがちですが全く別物。
水抽出法(塩化メチレン法)のカフェイン除去工程
STEP5の段階で成分を再吸収させるという内容とカフェインを除去した水溶液にコーヒーの生豆を入れてカフェインのみを水溶液に移すとされる内容の2通りがあります。
調べましたがどちらかはよくわかりません。
水抽出法(塩化メチレン法)の 特徴・メリット・デメリット
- 有機溶媒が直接豆に接しないので安全とされている
- 塩化メチレン・酢酸エチルは日本では使用できない
- 酢酸エチルについては自然界に存在する為安全とされ海外では一般的な除去方法
- 安価にカフェイン除去できる
ウォータープロセス製法
水のみを使用してカフェインを抽出する製法です。
主に2種類あります。
スイスウォーター製法
スイスウォーター製法とは1940年代に開発された脱カフェインの製法の一つです。
「SWISS WATER®プロセス」として商標登録されています。
水のみを使用しているので安全で日本でも主流。
スイスウォーター製法のカフェインを除去する仕組みについての動画です。
引用元:SwissWater Decaf
スイスウォーター製法のカフェイン除去工程
スイスウォーター製法の特徴・メリット・デメリット
- 薬品を使わず、水だけでカフェインを99.9%除去できるので安全
- カフェイン除去用水を繰り返し使用することでカフェイン以外の成分が生豆に戻っていくこと
- 繰り返し行うことで多少風味が落ちること
水だけを使用しているので安心!
マウンテンウォーター製法
スイスウォーター製法と同じ水だけを使用しますがその水がメキシコの天然氷河水を使用していることが最大の特徴。
また加圧・加温していくことで風味が失われにくいのも特徴。
マウンテンウォーター製法のカフェインを除去する仕組みについての動画です。
マウンテンウォーター製法のカフェイン除去工程
マウンテンウォーター製法の特徴・メリット・デメリット
- メキシコの天然氷河水を使用していること
- 薬品を使わず、水だけでカフェイン除去しているので安全
- カフェイン除去の工程が1回
- 加圧・加温して除去することで風味が失われにくい
天然水という響きはいいですね。スイスウォーター製法と飲み比べてみたい。
二酸化炭素抽出法
水と二酸化炭素を使用してカフェインを抽出する方法です。
2種類あります。
液体二酸化炭素抽出法
液体になった二酸化炭素を溶媒としてカフェインを除去する方法。
薬品を使用せず、二酸化炭素と水を使用しているので安全。
液体二酸化炭素抽出法のカフェイン除去工程
液体二酸化炭素抽出法の特徴・メリット・デメリット
- 二酸化炭素を溶媒として使用するので安全
- 低温・低圧でゆっくりカフェインを除去するので豆へのダメージが少ない
- カフェイン以外の成分が抜けにくく、香りや風味が残っている
- 二酸化炭素を使用しているので廃液の処理が比較的簡単
- ゆっくり除去するので時間がかかる
クロロゲン酸(コーヒーポリフェノール)も多く残ってます。
超臨界二酸化炭素抽出法
二酸化炭素を液体でもあり、気体でもある超臨界流体という状態にしたものを溶媒としてカフェイン除去をする方法。
超臨界流体は溶解する力が強く、カフェインの抽出やニンニクの臭気の抽出等に使われる。
- 臨界温度は31.1℃、臨界圧力は7.38MPaと比較的容易に超臨界流体になる
- 液体のような溶解性、気体のような拡散性を併せ持ち、短時間の抽出が可能になる
- 温度や圧力で溶解度を調整できる
- 毒性がない
- 再利用が可能
超臨界二酸化炭素抽出法のカフェイン除去工程
超臨界二酸化炭素抽出法の特徴・メリット・デメリット
- 生豆を膨張させる為に使った水と二酸化炭素しか使用しないので安全
- 気体に戻すことで容易に回収が出来、再利用しやすい
- 温度や気圧をコントロールすることでカフェインを狙って抽出しやすい
- 液体二酸化炭素抽出法と比べて時間がかからない
- 高圧処理等が必要な為設備コストがかかる
化学の実験のよう。最新の技術で安心!
カフェインクリア製法
キリン株式会社独自の特許技術。
カフェインクリア製法とは
緑茶や紅茶の味や香りなどのおいしさを維持しながら、茶中のカフェインを選択的に吸着除去する当社の独自技術です。カフェイン除去の方法としては熱湯などで茶葉そのものからカフェインを洗い流す方法が一般的ですが、当社の飲料技術研究所では、味わいや香りを維持するため緑茶や紅茶の抽出液からカフェインだけを除去する方法に挑戦しました。そして、カフェインを選択的に吸着する天然吸着剤を活用することにより、カフェイン除去とおいしさを両立するとともに、飲料適性と汎用性を兼ね備えた同製法の開発を実現しました。
引用元:キリンホールディングスHP
ペットボトルのお茶や紅茶で活用されています。
品種改良や遺伝子組み換え
そもそもカフェインのないコーヒー豆が取れる、コーヒーノキを作ろうと言う考え方。
品種改良や遺伝子組み換え等の研究が進んでいるようですがまだ実現して販売には至っていません。
遺伝子組み換えは身体にどんな影響が出るかわからないのでちょっと怖い。
デカフェって安全なの?カフェインレスコーヒーはどうやって作ってるの?総括
カフェインレスコーヒーはどうやって作られているのかまとめていきます。
- カフェインレスコーヒーの意義は、カフェインによる副作用を避けたい人向けに提供される
- 特定の健康状態の人々や妊娠中の人にとって、カフェイン制限が推奨されることがある
- デカフェはカフェインが大部分取り除かれたコーヒー
- デカフェの製造方法には安全性の高い水や二酸化炭素が使われる
- カフェインレスコーヒーには抗酸化物質が含まれ、健康への利益もある
- カフェインが完全に除去されているわけではなく、敏感な人は反応する可能性がある
- カフェインレスコーヒーは、カフェイン以外のアミノ酸や脂肪酸も含む
- 日本ではカフェインを90%以上除去したものが「カフェインレス」と表示される
- 有機溶媒抽出法では直接法と呼ばれる方法でカフェインを除去
- 水抽出法は間接的にカフェインを除去し、安全性が高いとされる
- スイスウォーター製法は水だけを使用してカフェインを99.9%除去する
- マウンテンウォーター製法はメキシコの天然水を使用し、加圧・加温して風味を保つ
- 二酸化炭素抽出法は、液体と気体の特性を持つ超臨界二酸化炭素を利用
- カフェインクリア製法は、カフェインを選択的に吸着除去する技術
- 品種改良や遺伝子組み換えによるカフェインのないコーヒーノキの研究が進行中
カフェインレスコーヒーを取り入れて、コーヒーライフを楽しみましょう。